主 now The きく♥みみ&たび 2006年03月
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33 さよならの時 (最終話)


ヤッタの家では、昨夜から大騒ぎになっていました。

深夜の雷雨で目が覚めたヤッタの家の奥さんは、
出しっぱなしのヤッタのトイレを取り込むために、
真っ先にベランダへ向かいました。
雨が吹きこまぬように、サッシ戸を閉めにいったのです。

すると、居間のソファで寝ているはずのヤッタがいません。
(そりゃそうですね。ヤッタはその頃、森の神社におりましたから)

「ヤッター?どこ?・・ヤッタ?」 
奥さんは、再びベランダに目をやりました。
(ヤッタ!まさか・・)

閉めたカーテンの隙間から、稲光がピカリンと差込んだかと思うと、
大きな落雷の音。

「あなたー!ヤッタがいない!!いないの!」

奥さんは、叫びながら寝室へ向かいました。

「あなたー!起きて!ヤッタがいないの!
 ベランダから、落ちたのかもしれないわ!どうしよう!
 雷も鳴ってるの!起きて下さいよ!ヤッタが!」
 
「ん?何だ?ヤッタがどうしたって?」

奥さんは声を震わせ、その場にへなへなと座り込んでしまいました。

「ヤッタがいないんです・・」

旦那さんは起き上がって、ベランダへ向かいました。
雨の降りかかるベランダから下を覗き込みましたが、
暗くてよく見えません。

「下へ行って見てくるよ。雷は、もう遠くの方だ」

「私も行きます」

二人は階下へ降りて、ベランダの真下にあたる植え込みを掻き分け、
ヤッタの姿を探しましたが、当然、ヤッタはいません。

「明るくなったら、ご近所に訊いてみよう。
 まだ、みなさん寝てる時間だ。
 今からだって、この雨の中じゃ、探しようがない・・」

「ヤッタ・・今夜に限って、どうして」

「いや、今まで出なかったのが不思議だったんだよ。
 猫だものなぁ。うかつだった・・」

そのあとも、二人は悶々としながら起きていました。

新聞が届けられる頃、朝食を済ませた夫婦は、
近所の空き地へ行ってみました。

ヤッタに似たような風貌の野良猫が数匹いましたが、
ヤッタではありません。

猫が入りそうな駐車場の隅、商店街のアーケード・・、路地。
二人はあちこち探してみました。

いよいよ、自宅繋ぎのお宅へ一軒づつ伺って、
ベランダにキジトラ猫がいないか、確認して貰いました。
が、いません。(その頃、ヤッタは会長猫の家にいました)

「戻って来れるわけがないですわね。
 一度も外へ出たことがないのに・・。
 ましてや、マンションの4階なんて」

「そうだな。降りることは簡単かも知れないが・・」

二人はがっかりしながら、帰ってきました。

「私、明日も探しに行きます」

「うん。一緒に探そう」 

奥さんは、気休めにお茶の用意をしようと台所へいきました。
旦那さんは居間のソファに腰掛けて、ぼんやりと窓の外を眺めていました。

---------------------

シャイの家の屋根から、森を眺めていたヤッタとブラッキーは、
瞬き信号で(行こう!)と合図をし合いました。
 
ブラッキーは、屋根の端から、マンションの2階の非常階段へ飛び移りました。
ヤッタも続きます。
素早く階段を駆け上がり、4階に来ました。

(ブラッキー、またね!ご飯を食べたら、すぐ来てね。
 ベランダで待ってるよ!)

(ヤッタ、また会おう!)

ヤッタは、非常階段から、角の部屋のベランダへ降り、
そこから手摺りに飛び乗り、歩き出しました。

僕は本物のネコ。
ネコなんだ!
落ちはしない。

ヤッタは無事にベランダへ到着しました。
トイレはありませんでしたが、窓は開いてます。


偶然でしたが、居間に居た旦那さんは、
手摺りを歩いてベランダに降りたヤッタを見てしまいました。
驚きつつも、そばに居て気づかない奥さんに慌てて囁きます。

「やや・・これは驚きだ。そーっとベランダを見て。
 ヤッタが・・戻って来たよ!今、そこにいる。
 お前の後ろに・・。振り向くな・・大きな声は出すな。
 ヤッタが驚いて逃げる!
 部屋に入るまで、ここに来るまで・・
 声をかけずにいるんだ・・。そーっと・・」

「ヤッタが?あなた!本当ですか!」

奥さんは、信じられない様子で旦那さんの顔を見つめました。
旦那さんは、必死で笑いをこらえました。

ヤッタは、何事もなかったかのように、
旦那さんと奥さんのそばを素通りし、
台所へと向かい、鳴きました。
「おなかすいたー」と。

旦那さんは、サッシをぴたりと閉めました。
そして、エアコンのスイッチを押しました。

奥さんは、ああ!と、驚きと感動の声をあげながら、
飛んでいってヤッタを抱き上げました。

「ヤッタ!ヤッタ!よく帰って来たわ!心配したのよ!
 どこいってたの!落ちたら死んじゃうのよ!
 もう、ベランダにトイレは置かないわ。
 もう、ベランダに、ヤッタは出さない・・」

「そうだね。もうトイレは中に置こう」

旦那さんも、ヤッタの背中をなでながら、

「1匹ってのは、寂しいのかな。
 ヤッタの相棒に、もう1匹飼おうか?」と言い出しました。

奥さんは、嬉しくてたまりません。

「そうね、そうしましょう。
 そういえば・・、
 さっき行った空き地に捨て猫の親子がいましたわね。
 ほら・・大きい方が赤いリボンをしていて、
 その猫とそっくりの子猫もいたでしょう?
 私たちが近寄っても逃げなかった猫たち。あの親子」

「そうだなぁ。
 あの親子、いつか連れてくるか」

「ええ!」


ヤッタはミルクを飲んだあと、すぐにベランダへ向かいました。
サッシ窓は閉まっています。
仕方なく、窓から手摺りをじっと見つめていました。

その向こうに見えるのは、空だけです。
サッシを開けてベランダに出ない限り・・
ヤッタに地上は見えません。

その後、ヤッタの前に、ブラッキーの姿は現れませんでした。
瞬き信号発見


■□■………… 完結 …………■□■

長い間、【ヤッタの冒険】のご愛読、どうもありがとうございました。
 
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32 帰り道の冒険

ヤッタはブラッキーのあとから、シャイの家の裏手に回り、
枝の太い柿の木の根元に来ました。

「ヤッタ、今から木登りだ。
 猫らしい冒険だと思わないか?
 僕が先に登るよ」

ブラッキーは、青く大きな実を付けた柿の木を見上げて、
ツメを立てたかと思うと、するすると登りはじめました。
セミたちが、あわてて飛び立ちます。

すごいよ、ブラッキー!
僕も、登るよ!
簡単じゃないか!
ヤッタのツメは、面白いように幹にひっかかります。
すぐにブラッキーの待つ枝まで登りきりました。

帰り道の冒険

葉と実の隙間から、ブラッキーが顔を出します。

「ヤッタ、来たね!木登りって面白いだろう?」

「うん!初めてなのに、ね」

柿の木は、二階の屋根のてっぺんまで届いていました。

ヤッタのマンションは、シャイの家の裏手にあります。
マンションの非常階段が、すぐそこに見えました。

ヤッタの住む待

ヤッタは照れながら言いました。

「いろいろあったけど、ブラッキー、
 僕ね、もしかしたら・・
 あの集会の森へ、ひとりで行けるような気がするよ。
 でも、明日もブラッキーと行くよ!いいでしょ?」

ブラッキーは黙って頷いたあと、
シャイの家の屋根を見ながら言います。

「ヤッタ、もうひと頑張りしよう。
 ここから、その屋根の上に飛び乗るんだ。
 思いっきり飛んで、どこに着地してもいいけど、
 そこで、しっかり体を支えるんだよ、滑らないように。
 今度は先に飛んでごらん」

「うん。でも、もし滑ったら?」

「その時はまた、ここまで登って来るんだ。
 大丈夫だよ。
 僕はヤッタが飛べると見込んで、この木に登ったんだ。
 飛べなかったら、人間の歩く道から行くよ?」

「やってみる」


ヤッタはシッポを震わせ、狙いをさだめて、
屋根の上に飛び移りました。

「うまくいったよ!ブラッキー」

「うん。油断するなよ、ヤッタ」

ブラッキーも、ヤッタの隣へ着地しました。

「ヤッタ、もう家に着いたも同然だよ。
 今度はマンションの非常階段へ飛び移る。
 そこが3階だから、こんどは、」

「手摺りを歩くんだね!」

「そうだよ。
 だけど、手摺りを歩き始めたら・・」

「黙って歩く!でしょう?」

「うん。そのとおり!」

ブラッキーは、柿の木の枝先のほうへ、
静かに、ゆっくりと移動しました。
屋根のいちばん高いところに着くとヤッタを見て、
瞬き信号で言いました。

(ヤッタ、ここまで来れるか?
 ここからの眺めが、すごくいいんだ)

ヤッタは這うようにして、ブラッキーのそばへ行きました。
その姿が可笑しくて、ブラッキーが笑いました。

(だって、ブラッキー、
 僕は初めてなんだよ!)
 
二匹は、柿の木の枝先が届く屋根のてっぺんから、
坂下の町並みと森の入り口を眺めはじめました。


 
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シャイの話 より

家の中から、人間のお婆さんとお友達の笑う声が聞こえてきました。
お婆さんが言っています。
「うちのこは、おすまし猫で、呼んでも来ないのよ。
 そこがまた、猫らしくていいのですけどね」

ヤッタとブラッキーにしか、聴こえません。
シャイの話


■□■………… シャイの話 より
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31 シャイの話

「ヤッタ、調子はどう?」ブラッキーが尋ねました。

「大丈夫だよ」

「そうか。なら、出かけようか?」

「え?」

「帰ろう」

「え?僕、みんなと一緒に戦うよ?
 今、そう言ったはずだけど?
 寅吉さんや寅次さんが帰ってくるまで待っていようよ」

ブラッキーは再び苦笑しました。

「だけどヤッタ、その前に家に帰ろう。
 何も食べてないだろう?
 僕も帰るから、ね?
 ここはノラに任せて、僕らはいったん家に帰ろう」

ノラも(それがいいと言う顔で)ヤッタを見ました。

「解った。腹ごしらえもしないとね」

「ノラ、ちょっと行って来るよ。
 ヤッタの家では、きっと大騒ぎしてるだろうから」

「あいよ!待ってるぜ!
 明日の朝、あの森で会おう!」ノラが言いました。

ヤッタとブラッキーは、会長猫の家から出て行きました。
道の端を歩いて行こうとしたヤッタに、ブラッキーは言います。

「ヤッタ、こっちだよ!車の通る道は避けよう。
 この細い道をぬって行くのさ」

ブラッキーは、家と家の隙間を歩き出しました。
エアコンの室外機からは、むっとする温風がヤッタの体を包みます。
ビルとビルの隙間は、今朝の雨が嘘の様に乾いていました。

「ブラッキー、こんな道を歩くの?」

「安全なんだよ」

ブラッキーが笑って言いました。

太陽が真上になり、二匹は、日陰を探して歩きました。
歩きながら、ブラッキーは言いました。

「ヤッタ、初めての夜遊びの感想は?」

「ん?・・うん、僕、弱虫だったよね。
 怒ったり、泣いたり・・」

「弱虫じゃないよ」

「ご飯を食べたら、ベランダまで迎えに来てね。
 待ってるから」

「うん」

「僕さ、まだ・・ひとりで手摺りを歩けないよ。
 ブラッキーが前を歩いてくれないと」

「うん」

二匹は、シャイの家の前に着きました。

(あ・・この香りは・・シャイの家の香りだ。
 ということは、このお家の向うに、僕の家があるんだ!)
ヤッタが見上げると、確かにシャイの家の裏手に、
大きなマンションが建っていました。

「ブラッキー!着いたね!シャイの家だ」

「うん。シャイを紹介するよ」

二匹は、垣根をぬけて、シャイの家の庭の中に入り込みました。
庭の木陰に、小さなテーブルが出ていました。
その上で、真っ白で毛の長い大きな猫が寝ています。

「いたいた!あれがシャイだよ。
 ヤッタ、覚えているか?
 シャイは片方の耳が聴こえないんだ。
 だから、瞬き信号で話すんだよ。
 ちょっと待ってて」

「うん・・」

ブラッキーはあたりを見回し、用心しながらシャイに近づいていきました。
ブラッキーの気配を感じて、シャイが大きな目をあけました。

(こんにちは、シャイ)

(あら、ブラッキー。いらっしゃい)
シャイは起き上がって挨拶しました。

(友達といるんだ。紹介したいんだけど、いいかな?
 お婆さんは?今、大丈夫?)

(いいわよ。お婆さんはね、今、お客さまとお茶を頂いてるの)

ブラッキーがヤッタに来るよう合図しました。
シャイがヤッタを見て微笑みました。

(こんにちは・・シャイ。僕、ヤッタ)

(はじめまして、ヤッタ)

シャイの長い毛は、キラキラと光っていました。

(ブラッキー、昨夜の集会に出たのですか?)

(うん。ヤッタを誘って行って来たよ。
 ゴミあさりの話だった。
 シャイには無縁の話だね)

(そう。私ね、夕べは、ちょっと体調を崩してしまって。
 今朝、病院へ連れて行ってもらったの)

(大丈夫?)

(ええ、お薬を頂いて来たわ。
 でも、今朝は混んでいたわ。
 私の順番が来るまで、とても時間がかかったの)

シャイがゆっくりと瞬きしながら、話します。

(怪我をした猫ちゃんが3匹も、緊急で来たの。
 お婆さんは待ってる間に、お喋りを楽しんでいたわ。
 喧嘩に巻き込まれて大怪我をした男の仔も来てしまって。
 私は、後回しにされちゃったわ)

(そうなんだ。
 実は、僕らも・・この帰り道に、
 ちょっと悲しいことがあったんだ。
 ミュミュ、って毛長の子猫がね・・)

ブラッキーは、ミウに出会った話をしました。
シャイは黙って聞いていましたが、
ミウが事故にあって死んでしまった話になると、
目を潤ませました。

(そのこ、ミュミュちゃんと言うの?・・
 そう、可哀想に・・)
シャイは、獣医が『ミウちゃんかな?ミウちゃんだね』
そう言ったあと、ミウが頷いていたことを思い出しました。
猫の名前にミから始まる名前は多すぎました。
シャイは、ミュミュがミウだと解るはずもありません。



ヤッタも思い出して涙をこらえました。

(ヤッタ、お外で遊ぶ時は、気をつけてね)

シャイがヤッタに言いました。

(うん)

シャイは、ヤッタとブラッキーに語りかけました。

(その怪我をした猫ちゃんのなかに、迷子もいたの。
 でもね、先生が診察をしたことがあったそうなの。
 どこのお宅の猫ちゃんか、覚えていたんですって。
 だから、無事にお家に帰れたらしいわ。
 不運が幸運になることもあるのね・・)

(うん・・。
 病院には、いろんな患者猫が来るだろうね。
 治療して治る怪我や病気なら、不幸じゃないよ)

(そうね。先生が呼んでいたわ・・。
 迷子の子猫ちゃんに、ミウちゃん、お家へ帰れるよ。
 痛い思いをしたけど、よかったね、って・・。
 そういう仔も、来たの。
 車にぶつかって、ショックで気絶しただけですって)

(そう。僕らも車には気をつけるよ。
 ミュミュちゃんの、あんな姿を見ちゃったら・・。
 さて、)

ブラッキーがヤッタに(行こう)と、合図をしました。

(シャイ、またね!)(またね、シャイ)

(ええ、またお話しましょう)

家の中から、人間のお婆さんとお友達の笑う声が聞こえてきました。
お婆さんが言っています。

「うちのこは、おすまし猫で、呼んでも来ないのよ。
 そこがまた、猫らしくていいのですけどね」

シャイの話

ヤッタとブラッキーにしか、聴こえません。
シャイは笑って見送ってくれました。

いつか再び、ヤッタがミウと出会えたら・・
ヤッタはどんなにか、嬉しく思ったことでしょう。
ブラッキーも。

でも、ヤッタはミウに再び出会うことはありませんでした。
 
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30 約束

蜂に刺されたヤッタ

ヤッタは目を閉じて、寝たふりをしていました。

ノラは会長猫に話し続けました。

「早い話が、あのカラス達をやっつけようって約束で。
 俺の妹は、アイツらに目をつぶされちまって、
 それから、だんだん弱ってしまい、とうとう死んじまったんです。

 その話をドラマサにしたら、ドラマサもアイツらに不満を持っていた。
 家の人が、ゴミ箱の蓋を開けているのはドラマサじゃないかと、
 疑って話しているのを聞いちまったそうで。
 このままでは、ここらの野良猫の食うもんが無くなっちまうし、
 ドラマサはそのうち家から出してもらえなくなるだろうって。
 なんとかしようって、話していたんでさ」

「そうですな。
 そう言われてみれば、確かに、この辺りのカラスは増えましたな」

「ドラマサは、俺を野良のボスに紹介しがてら、
 野良のボスに、助っ人の相談もするつもりだった。
 俺たちだけじゃ、やられちまうから。 
 誰だって、負ける喧嘩はしたくないってもんで」

「なるほど」

「その朝はやく、俺たちはドラマサの店の前で落ち合った。
 すると、1羽のでっかいヤツが来て、
 ゴミ箱を突付いて、あっという間にフタを開けたんだ。
 俺はカーっときて、飛びかかって行った!
 するってーと、勢いあまって、ゴミ箱の中に入っちまった!
 ヤツは笑いながら、俺を突付き始めた。
 痛いの痛くないのって!ゴミ箱を倒して、転がり出たさ!
 それでも、しつこく突付いてきやがった!

 ドラマサが、ヤツの注意を引いてくれているすきに、俺は逃げた。
 ドラマサは、アイツが俺から離れたのを見て、家の中へ逃げ込んだ。
 そんときでっさ、ちょうど家の中から、ドラマサの家の人が出て来た。
 家の人は怒ってブツブツいいながら、ゴミを集めはじめ、
 アイツは遠くで眺めていた。
 最初に来る、アイツ。アイツが仲間を呼んでくるんですよっ!」

「なるほど・・。
 ノラさんが逃げる姿、そこらあたりから、
 お隣の桃子バァは見てたのですな。
 それをボスに話したのですな。
 私が聞いた話と一致しました」

ノラは、まだ話し足りない様子です。

「会長さん、妹の仇だけじゃないんですよ。
 俺は、この町に落ち着きたいと思い始めているんだ。
 多少の痛さは我慢できます。
 ひとつ、暴れされてくれませんかね」

「なるほど。その話、請け負いましょう。
 それは、この町全体の問題ですな。
 足があれば、どこへでも歩いて行けます。
 羽があれば、どこへでも飛んで行けます。
 坂下から追い出せば、坂中へ行くでしょう。
 坂中から追い出せば、坂上へ行くものです。
 坂下のボスと坂中のボスと坂上のボスに話して、
 若い者を集めてもらって、猫の手をかきあつめて、
 みんなで、この町のゴミ箱を守りましょう」

ノラがドラマサと交わした約束は、店の前に現れるカラスを追い払うことでした。
話を最後まで聞いた会長猫は、蔵の前で体を伸ばしていた寅吉と寅次を呼びました。

(今の話、聞いてましたね。
 そこここ界隈のボスに話して、
 協力をお願いしてきて下さいな)

会長猫は、すばやい瞬き信号で、二匹に合図をおくりました。

(了解しました)
(行ってきます)

寅吉と寅次は、答えたと同時に走って行ってしまいました。

「ノラ、僕も参加するよ!」

ブラッキーがノラに言いました。

それを聞いたヤッタは、寝たフリなんてしていられません。
蜂にさされて、少し膨らんだ口もとを押さえながら、大声で言いました。

「ノラ、僕も!僕もやる!僕も参加する!」

ヤッタの声を聞いて、ブラッキーは苦笑しました。

「では、みなさん、
 明日の早朝に、にょめごと森で会いましょう。
 私は昼寝の時間なので、ここで失礼いたします。
 どうぞ、蔵の中で一休みしていって下さいな。
 寅吉と寅次が帰って来るまで、どうぞ」


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29 蜂にさされたヤッタ

会長猫の家は、古い造りの一軒家でした。
庭のあちこちに色とりどりの花が咲いています。

母屋から少し離れたところに、小さな蔵がありました。
扉は開かれたまま、中には自転車や三輪車が見えます。
蔵の扉の陰で、寅吉と寅次がねそべっていました。

ブラッキーは二匹に、瞬き信号を送りました。
会長猫を呼んで来てほしいと合図をしたのです。
寅次が起き上がって、会長猫を呼びにいってくれました。


ヤッタたちは、母屋の縁側の前にある花壇の近くで待ちました。
ちょうどヤッタの耳元で、何かの音が聴こえてきます。 

なんだろう、何の音だろう・・

ヤッタが耳を澄ますと、ブーンという音がします。
ミツバチでした。
花のまわりを飛び回っていました。
今にもヤッタの耳に飛び込んできそうな気配です。

捕まえてやろうかな・・。
ヤッタはミツバチに注目、近くの1匹に狙いを定めました。

会長猫が母屋の縁側に現れました。
ノラとブラッキーは、今朝の出来事を話しはじめました。

「そうですか。
 ミュミュさんは・・そんなことに。
 はぁ・・」

蜂に刺されたヤッタ

母屋の縁側にちょこんと座った会長猫は、 
ブラッキーの話を聞き終わると、ため息をつきました。 

会長猫がノラに言いました。

「疑ったりして、たいへん申し訳ないことをしましたな。
 しかし、ノラさんとドラマサくんは、知り合いでしたか?
 なぜに、あなたが疑われ、ドラマサくんがカワレ猫に?」

「それは、あの日、あの朝・・俺はドラマサと・・」
と、ノラが言いかけた、その時、
「あ!痛い!」と、ヤッタが叫びました。

「どうした?」ブラッキーがヤッタの顔を見ると、
ヤッタは、口を両手で押さえています。

「口の中に!」

ヤッタは、ミツバチを捕まえて口の中に入れ、
噛もうとして刺されてしまいました。

「刺されたのか?ヤッタ、大丈夫か?
 それはほっといても治るよ。
 けど、気をつけろよ。
 花にとまる虫は、食べるな!」
ブラッキーがそう言って笑いました。

「だって・・気になったんだもの」
ヤッタがミツバチを吐き出し、口をもぐもぐと動かして言いました。

会長猫が気の毒そうに笑いました。ノラも笑いました。

寅吉が笑いながらやってきて言いました。

「すみません。遠くで見てました。
 ヤッタさんは、刺されると思ってました。
 僕たちも何度もやられてますよ。
 黙って見ていて、すみません。
 これでも噛んで、落ち着いて下さい」

寅吉がマタタビの実を一つ、ヤッタに渡しました。
マタタビの実を貰ったヤッタは、それを噛んで痛みがとれ・・
だんだん眠くなってきました。

「ヤッタ、会長さんのとこで、少し寝ていけよ。
 体調を整えないと、あの手摺りを渡ってかえれないぞ」

「うん。会長さん・・いいですか?」

会長猫は笑って頷きました。
ヤッタは口の中をもごもごさせながら、寅吉と蔵の方へ行きました。

会長猫はノラの話に戻しました。

「で?ノラさん、話の続きをお願いします。
 ドラマサくんと会う、何か約束事でもあったのですかな」

「俺がそもそも、この町へ来たキッカケは・・
 トラックに乗ってしまったからだ。
 幌の上がったトラックの荷台で寝ていたら、
 突然に、幌が降ろされ、トラックが走りだしたのさ。
 降りるに降りられず・・
 この町まで来てしまったんさ。
 そして、どこかでトラックが止まった。
 俺は幌が上げられた隙に飛び降りた。
 そこがドラマサの家の前で、ヤツと知り合った。
 数日、ドラマサに世話になった。
 この町に長く居るなら、ボスに挨拶した方がいいって、
 ボスを紹介してくれるとドラマサが言ってくれた。
 その、挨拶をしに行く朝・・アイツらに会った。
 ドラマサからも聞いていたんだ。
 俺は、妹のためにもドラマサとの約束を守る!」

ノラは、この町へ来た経緯とドラマサと出会ったこと、
そして二匹が交わした約束を話し出しました。

ブラッキーも聞いていました。
寅吉も寅次も聞いていました。
実はヤッタも聞いていました。 

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余談ですが・・

みなさん、こんにちは!koma_p.jpg

駒吉です。


毎度【ヤッタの冒険】をご愛読頂きまして、
心から感謝申し上げます。


お話が延々と(ダラダラと?)続きまして、
読みつかれた読者さまもいらっしゃるのではないでしょうか?
すみません(^^;) 

【ヤッタの冒険】を書いているときは、自分もすっかり猫気分です。

我が家にも種種雑多の猫がおりまして、長毛、短毛、中毛(MIX)と、さまざま。
知り合いのブリーダーから頂いた猫や、
そこらへんを駐屯していた野良猫など。
そしてそれらの子猫たち、最後に生まれた猫も早6年以上になりました。
(子猫はおりません)

物語りも終盤に近づきまして、今日は余談を少々書かせて頂きます。

◆ヤッタとブラッキーのモデル猫は・・

ヤッタ
過去に飼っていた我が家の猫の名前でもあります。
が、ヤッタの行動モデル猫は、スギサクという♂猫で、
すでに他界しております。
スギサクは我が家(4階)の台所の窓から脱走したことがありました。

当時、台所の窓は、ちょっとだけ開けて(網戸だけ閉めて)いました。
ある日、外出した留守中に網戸を開けて、階下までダイビングしたのですね。
とは言っても、隣は3階建(雑居ビル)でして、その屋上へダイブしたのです!
そのあと恐らく非常階段を降りて、下まで行ってしまったのでしょう。

帰宅した時、自宅マンションのゴミ置き場にスギサクそっくりの猫がいたので驚きました。
しかし、まさか4階から脱走するなんて想像もできません。
部屋に入って、真っ先にスギサクを探しました。いません。
台所の窓を見ると、網戸があいています。ゾっとしました。

アイツ、やっぱスギじゃん!
あわててゴミ置き場へ行くと、スギサクはまだいました。
外へ出たところで、遠くへ行けないのですね。
飼い猫のいじらしいところです(笑)
声をかけたら、じーーーっとこちらを見ていましたが、
突然逃げたのです。

まるで知らない人に出会ったかのように。
その様子で、ケガもしてないことがわかりました。

その晩、家族でスギサク探しをしました。
大きな声で呼ぶと、近所迷惑になりそうで・・
小さい声で呼んでましたが出てきません。
途方にくれた深夜、あることを思いついて実行しました。

我が家には、スギサクと仲良しの姉貴猫(チャミ)もいたので、
彼女をバックに入れて、近所を歩いたのです。
チャミは狭いところが嫌いで(笑)バックのなかで鳴き出しました。

その鳴き声を聴き付けてか、スギサクがひょっこり現れ、
バックに近づいてきました。
なんとか取り押さえ一件落着?

いえいえ、話はそれで終わらずに・・その後再び網戸を破って脱走。
よほど外に出たかったのか、我が家の居心地が悪かったのか(^^;)

大事に至る前に、なんとかしなければ?と思いまして、
田舎の実家へ相談して、そちらで飼われることに。

晩年は悠々自適のハンノラで、父親が会社へ出勤するときは、
犬のように見送っていたそうです。

スギサク、それがヤッタのモデル猫です。

ブラッキーのモデルもおります。
昔、エンリョ、と勝手に名前をつけて呼んでいた、
近所の雑種犬です。(笑)
その犬は、不思議な犬でした。
深夜になると出現、野良猫たちに混ざって、一緒に行動していました。

あの頃は、深夜になると飼い犬を放すお宅があって、たぶん昼間は繋がれていたのでしょう。
その当時は仕事で帰りが遅くなり、よく見かけました。
コンビニで買ったお菓子をあげようとすると、野良猫は寄ってきましたが、エンリョは来ません。

それで「遠慮するなよ、食べな」と言ってるうちに「遠慮」エンリョ。

最初は、大きな猫がいるなぁ・・と眺めていましたが。
・・犬だったのですね(^^;)。
まるで猫たちの用心棒のような犬でしたが、哀愁が漂っていました。
頭も良かったです(何回か会話しましたが、人の言葉が理解できる!顔つきをしていました)

と・・物語の登場猫たちにはモデルがおります。
猫がモデルとは、限りませんでして(笑)

トミ爺やミウもモデル猫がおります。

さて、物語は、あと少しで最終話を迎えます。
なにとぞ、もう暫くのお付き合いを宜しくお願いいたします。

■□■…………… 駒吉o(=^x^=)o

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28 泣いた猫たち

ブラッキーはすぐに歩き始めました。

ヤッタもブラッキーとノラの後から歩き始めました。
でも、ヤッタは黙って歩くことが辛くてなりません。

何事も無かったかのように歩き出すブラッキーとノラのあとから、
やるせない気持ちでついていきます。

ヤッタの頭のなかは、ミウのことでいっぱいでした。

今、僕たちが見たこと、ミュミュちゃんのこと・・
このまま何も話さないで歩くの?
ミュミュちゃんは、どうなっちゃったの?
あのおばさんは、ミュミュちゃんをどこへ連れて行ったの?
ブラッキー、何か言って!
僕・・わからないよ・・
ヤッタは心の中で叫んでいました。


ブラッキーは黙ったまま歩いています。

堪らなくなったヤッタは、声をかけます。

「ブラッキー、
 ねぇ、ブラッキー!」

ヤッタの呼びかけに、ブラッキーは応えません。

「何か言ってよ!ブラッキーってば!」

ヤッタは涙声になりました。

そして独り言のように呟きました。

「僕、ミュミュちゃんに優しくなかった。
 こんなことになるなら、もっと、もっと・・」

ノラが歩きながら、ヤッタに言います。

「俺の妹に比べたら、あのこはマシだったさ。
 一瞬で、あの世に逝ったんだぜ。
 苦しまなかったじゃないか」

「ノラ、今、ノラの妹の話をしてるんじゃないっ!
 ミュミュちゃんの話じゃないかっ。
 ミュミュちゃんが可哀想なんだっ!」

「なにっ?俺の妹も可哀想だったんだぜ!
 ありゃぁね、あのこはねっ、考えもなく飛び出した。
 ちょっと見りゃ解ることだったぜ?
 車の通る道を歩いていたら、起こるものなのさ。
 あのこの不運じゃねぇか。
 あきらめろよ。
 あんただったかもしれないし、俺だったかもしれない。
 誰にだって起こることだっ!」

「違うよ!そういうことじゃない!
 ミュミュちゃんなんだよ!
 今、起こったことを話してよ!
 ミュミュちゃんじゃないか!
 僕らには、まだ何も起こってない!」

「だから何だって?何を話せって?
 驚いたなぁ、可哀想になぁって、言い合えってか?
 俺だって、あたる瞬間を見たのは初めてさ。
 だけどね、ぺちゃんこになったヤツは何度か見てる。
 野ざらしなんだぜ?
 最後は枯れ葉っぱみたいに飛んでいくよ。
 気の毒だとは思うけど、明日はわが身と思ってるぜ。
 冷静になってくれよ」

「だから!違うんだよ、ノラ。
 僕が言いたいのはね、・・そういうことじゃない!
 そういうことじゃないんだ。
 僕は・・僕は・・」 

ヤッタはムキになって、ノラに食い下がりました。

ノラは黙りました。

ヤッタは、ミウが人間のおばさんに抱かれていたときの、
哀しい不安げな顔を思い出しては、不憫に思えてたまりません。

泣いた猫たち
違うんだ、ノラ・・だけど僕、うまく言えない・・
怖かったのと悲しいのと、この気持ち、嫌なんだ。
とても嫌なんだ。
このままじゃ、嫌だ・・

ヤッタはそう思いながら、溢れ出る涙を拭きました。

足の裏が痛いと言ったミウ、
毛づくろいに必死だったミウ、
縁の下で丸くなって寝ていたミウ、
ヤッタはミウの姿を思い出していました。

ブラッキーも、悲しみでいっぱいでした。

ノラがポツリと言いました。

「俺なんかのために、町歩きして・・
 あのこは疲れてしまった。
 こんなとこを歩かせたから、
 あのこは逝っちまったんだ。
 俺のせいさ・・」

先を歩いていたブラッキーが立ち止まり、
振り返ってノラを見つめました。

ノラの瞳は、涙で光っていました。
ヤッタが駆け寄り、ノラに言います。

「違うよ。ノラじゃない。僕のせいだよ。
 ミュミュちゃんが連れて行かれると思ったから、
 驚いて声をかけた、僕のせいだよ」

ブラッキーは瞳をうるませながら、低い声で言いました。

「やめないか・・
 ノラでもヤッタでもないさ。
 安全な道を選ばなかった、僕のせいなんだ。
 ミュミュちゃんが、初めての町歩きだってこと、
 僕はうっかり忘れていたんだ。
 僕の段取りが悪かったせいさ。
 ヤッタ、ごめんよ・・  
 君が自分を責めることはないんだ。
 優しくしてあげられなかったなんて・・
 君も、町歩きは初めてだった。
 ミュミュちゃんと同じ・・
 自分のことしか考えられなくて当然なんだよ。
 我慢しなくていいよ。 
 君も怖くてたまらなかったよね。
 君の気持ちも知らずに、黙って歩き出してごめんよ。
 ごめんよ、ヤッタ、本当に、ごめんよ」

そう言い終わると、大粒の涙を落としました。

ヤッタは、ごめんと繰り返すブラッキーの言葉を聞いて、
ますます、しどけない顔になり、思い切り泣き出しました。
その顔は、まるで迷子の子猫のようでした。

ブラッキーは、ヤッタがまだ子どもだと改めて実感しました。
自分の話を一所懸命に聞きながら、手摺りを歩いたヤッタ。
こんなに心細い思いをさせて、すまないとも思いました。
自分の考えをヤッタに強いたことを反省しました。

けれど、ヤッタを集会に誘ったことを後悔はしていませんでした。

ヤッタは、我侭だけど素直に育っているんだ。
外歩きに慣れた猫たちの持つ擦れたところもなく、
媚びることを知らない猫として、カワレ猫らしく。
それは悪いことじゃない。
それで生きていけるんだから。 
お腹がすいても、知らない人からパンを貰わなかったヤッタ。
ヤッタは、カワレ猫のままでいいんだ・・
ブラッキーは、泣いているヤッタを見つめてそう思いました。

「ヤッタ、ミュミュちゃんは本当に可哀想だった。
 ここで思い切り泣いていいよ。
 ヤッタが元気になったら歩こう」

ブラッキーの優しい言葉を聞くたびに、ヤッタは泣きました。
ノラも妹猫の死とダブってしまったのか、泣いています。

それからヤッタは、泣きながら歩き出しました。

「会長さんちへ行こう・・。
 僕はもう大丈夫だから」 

ブラッキーとノラは、ヤッタを守るように並んで歩きました。

会長猫の家に入る頃は、ヤッタの涙もおさまっていました。


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ミウの運命 より

「あら、この猫ちゃんは、ペルシャかしら?チンチラかしら?
 いい猫ちゃんだわね・・どうしたのかしら?
 こっちの黒猫ちゃんも、逃げないのね」

そう言いながら、人間のおばさんは嬉しそうに、
パンの袋を脇にはさんで、ミウを両手で抱き上げました。
ミウの運命

■□■…………  26 ミウの運命 より

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27 それぞれの思い

ヤッタの叫びと同時に、おばさんの腕からすり抜けたミウは、
路地に入って来た車に、あたってしまいました。

路地は、一方通行でした。
ドライバーは対向車を気にせず、安心して走行していたのでしょう。
まさか、人に抱かれた猫が飛び出すなんて、予想外のことでした。


ミウは、おばさんの腕に爪を立て、
ブラッキーのあとを追おうと飛び出して、そして・・。

ミュミュちゃん!
あぁ!僕のせいだよ!僕が・・

ヤッタは頭の中が真っ白になり・・
跳ね飛ばされて、動かないミウを恐ろしい思いで見つめました。
ブラッキーとノラも、動かないミウを見つめていました。

ミュミュちゃん!
ミュミュちゃん!

ヤッタは繰り返し瞬き信号でミウに呼びかけました。

ミウに届くはずはありません。

地面に吸い付いたかの様に、横たわるミウの体。
ミウの瞼は、かたく閉じていました。

人間のおばさんが駆け寄って、ミウを抱き抱え、
わぁわぁと何か言っていましたが、ヤッタには解りません。
急ブレーキをかけた車の中から、人が降りてきました。
人間に囲まれたミウの姿は、ヤッタにも見えません。

その様子を見ていたブラッキーは、
まるで何事もなかったかのように、歩き出しました。
ノラも無言で、ブラッキーのあとを歩きました。

ヤッタは、すぐに動けませんでした。

ミュミュちゃんは・・
ミュミュちゃんは?

ブラッキー!ミュミュちゃんを置いていくの?
何か言ってよ!ブラッキー。

ブラッキーは、ヤッタに声をかける様子もなく、
まっすぐ前方を見つめながら歩いて行くようです。

ミュミュちゃん・・
ミュミュちゃん・・起きて!僕を見て!
置いて行くよ!!ミュミュちゃん!



ヤッタはなんとか、ミウの見えるそばまで寄って行きました。
そして、縁の下で毛づくろいに必死だったミウを思い出しました。

カワレ猫のミュミュちゃん・・
初めてだったんだ・・なにもかも。

僕のように、外に出たくて出たんじゃない。
ベランダから落ちて・・そのまま、僕らに付いて来たんだ。

なのに、僕は、ちっとも優しくなかった。
ブラッキーのように、安心させてあげなかった。

ごめんよ、ミュミュちゃん。
僕は、君がいなくなればいいと思った。
君をじゃまに思っていたんだ。

僕は早く家に帰りたかったんだ。

僕は・・集会に出たいと思ったくせに・・
歩き始めた時から、帰りたかったんだ。

僕は・・


ヤッタは、ミウを抱いたおばさんの姿が消えるまで、
どこかへ行ってしまうまで、ずっと動けずにいました。

ブラッキーが振り返ってヤッタに言いました。

(ヤッタ、会長の家に行くよ)


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プロフィール

美月

Author:美月
家族は、夫と母と愛犬3匹、愛猫3匹、熱帯魚。
2015年春まで都内在住。
2015年春から隣県の実家暮らし。

2017年秋、放置気味のブログをこちらに移行して、ワンコ日記を再開。
再開のキッカケは、きくみみに、弟分(たび)ができたから。

ガーデニングブログも、こちらに移行しました。

【主 now The きくみみ&たび】とは、
【シュナウザーきくみみ&たび】
主人公(主犬公?)は愛犬たちという意味です(^^)

-------------------------
注)
2017年10月以前の記事のページは、3つのブログがこちらに移行されていますので、
記事内容のダブりがあります。
少々ウザイ状態ですが(^^ゞ
リンク先が不明ページも(ここに移行して載せていますので)実は、あるのですょ。


猫の創作話は【駒吉(愛猫の名前)】で綴っています。

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