主 now The きく♥みみ&たび ●猫☆実話 6月の流れ星

6月の流れ星-1-

1、梅雨(つゆ)の晴れ間に・・

梅雨の季節は雲が厚く、なかなか星も見えないが、
梅雨の晴れ間の晩に、北東から頭上の空を眺める。
オレンジ色に光る牛飼い座の一等星を探す。
その星の名前は、アルクトゥールスと言うそうだ。
あの晩も、オレンジ色の星を見た。 
 
梅雨の晴れ間は、空気が澄んだ時だ。
重たい雲が移動して、ともすると、
冬の夜空のように糠星が見える。
あの晩に見た糠星の一つが、
涙の雫のように落ちていった。

話は15年以上前に遡(さかのぼ)るが、
私は6月に流れ星を見たことがある。
妻も一緒に見た。

私たちが東京へ向かった晩に、
故郷の方角へ落ちていった星。

------------------------------------

当時の私の家族(私と妻と成猫10匹)は、
東京郊外にある妻の実家で暮らしていた。 

田舎暮らしをしていた10匹の猫たちの生活は、
外出自由なハンノラ状態だった。

避妊手術をしわすれていたメス猫が、
地元のノラと交わって、2匹の三毛猫を生んだ。

毛色や模様が瓜二つの三毛猫姉妹。
双子のような猫だった。

双子猫が生まれて半年が過ぎた6月のある日、
私たちは都内のマンションに引っ越すことになった。

大きな荷物は、すでに運びきり、
最後の荷物は、手荷物だけの、
その晩は、大事な荷物を運ぶだけだった。

最後の荷物とは、12匹の猫。

渋滞に巻き込まれない為に、移動は夜にした。
少しでも、猫たちに負担をかけたくなかった。 

当時の愛車は、後部座席のシートを倒せば、
ペットバックが楽勝で10個は乗った。
双子猫はまだ小さくて大人しかったので、
妻は『私が抱いていく』と言っていた。

------次回-2-へ続きます・・

--------------------------

次回↓続きをUPしながら目次となります。
6月の流れ星

-1-.梅雨の晴れ間に・・(ココです)
-2-.双子猫
-3-.チコ
-4-.カレン
-5-.回想(最終話)
 
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6月の流れ星-5-(完結)

5、回想

慎重の上にも慎重に、この上もなく慎重に、
猫を第一に考えた引越しだった。
12匹を連れて、安全に移動するために夜を選んだのだ。

ところが、結果は最悪になった。
悲しみと、やり切れなさと・・・間抜けな思いがした。

『カレンを埋めて、そろそろ出ようか』

妻は返事をしなかった。
ほとぼりが冷めるまで待つか。
私はサンルーフ越しに天井を眺めていた。
ひときわ目立つ、綺麗な星が頭上にあった。

妻 『もう少し、この仔、抱いていていい?
   信じられないの・・
   信じられない・・』

どのくらいそうしていたのか、長いこと無言のすえに、
妻はカレンを抱いたまま、車から降りて裏庭へ歩き出した。
私は母屋の義父母に気づかれぬよう、物置からシャベルを持ち出し、
妻の立っているそばに穴を掘った。

------------------------------

実家から一番近い高速道路の出入り口は、数キロ離れた町にあった。
大回りになるが、下道から行くより信号のないぶん速い。
雨上がりの夜ということもあって、高速は上りも下りも流れていた。
妻は黙ったまま、ずっと窓から外を眺めていた。

私 「大丈夫?どうしたの?」

妻 「考え事してた」

私 「どんな?」

妻 「いろいろ。
   お父さん、寝ちゃったかな?とか」

私 「ん?・・どうだろ?
   今日は土曜だから起きてるかもな。
   起きていたら、すぐには行動しないよ」

私はチラリと妻の足元の箱に目をやった。

妻 「なに?」

私 「いや、抱くとか言い出さないでね」

妻 「言うわけないでしょ!
   いくらなんでも、もう死んでいるのよ?」

私 「ああ。だけど、言い出しそうだから(笑)」
 
妻 「なんて?」

私 「いや・・何でもない(笑)」

妻も笑って、願い事をするかのように目を閉じた。

----------------------------

私 『大丈夫?何考えてるの?』

妻 『・・轢いた人・・気づいたよね?』

妻が呟く様に言った。

私 『・・気づいたかもね。
   少なくとも、何かに当たったくらいは』

妻 『・・・・・』

私 『私の姿には気づいたみたいだ。
   ハイビームがローになったからね』

妻 『・・すれ違うのにギリギリの道幅なのに。
   どうして徐行してくれなかったんだろう』

妻は、轢いた誰かを恨みたい気持ちになっていた。

私 『もういいよ。そんな話をしても詮無い。
   轢こうと思って轢いたんじゃない』

妻 『轢いた人は悪くないの?人間だったら?
   これって、ひき逃げじゃない・・。
   猫ならいいの?猫だから?猫だって家族だよ』

私 『誰を恨んでも仕方ないさ。
   こちらにも落ち度があった』

妻 『私、よね?私が放してしまったから・・』

私 『もう、そろそろカレンを土に返してあげよう。
   こいつらも車に乗せっぱなしは良くないよ。
   早く連れて帰って、新しい家で落ち着かせないと。
   それこそ、具合が悪くなる』

妻 『・・・』


予定の出発時間より、数時間も遅れて実家を出た。
実家の町を高速道路から再び通過することになる。

前方の標識に、妻の実家のある町の名が見えてきた。

妻 『・・・』
 
私 『星が出てるよ』

妻 『・・うん』 

私 『梅雨でも、星って見えるんだね』

妻 『うん』

私 『明日は晴れるってことかな?』

妻 『さっきは、ごめんね・・』

私 『ワタシに謝ることはないよ』

妻 『そう言わないで。
   誰かに謝って、許してもらえないと・・
   辛くてたまらない』

私 『もう、二度と同じことをしないよう気をつけよう。
   カレンも許してくれるよ。それでヨシとしないか。
   人間の都合のいい勝手な解釈になるけど、
   カレンの死を無意味なものにしないように』

妻 『・・あなたの言うこと聞かなくて、ごめん』


ごめん、かぁ。

今更、謝るな。
私は急に悲しくなった。

タバコを銜えて、返事を濁した。
妻も再び黙った。

私 『この時期に、星空ってのも、珍しくないか?
   それとも、ここだから見えるのかな?』

妻は黙ったまま、正面を見ていた。

あ!・・
流れ星を見たのは、その時。

私 『今の見た?流れ星だった』
 
妻 『見た・・』

妻は数秒間、目を閉じていた。
そして新居に着くまで、時折、
無言で涙をこぼした。

---------------------------

私 「大丈夫?具合悪いのか?」

妻 「ん?今、願い事してたの」

私 「どんな?」

妻 「ほら、15年前・・。
   このあたりで、ヨナカに流れ星を見たでしょ?
   覚えてる?今の家に引越した晩。
   あの時は東京へ向かっていたから、反対車線だったけど」

私 「ああ」

妻 「また見せて下さいって祈った」

私 「あれ、確かに流れ星だったよな」

私たちが引っ越した晩を忘れないのは、
流れ星を見たからではない。
カレンを忘れないからだ。

妻は携帯電話で実家に電話した。

妻 「お父さん、今、寝たそうよ。
   着いたらすぐにやりましょう」




実家に着くと、義母が出てきて私たちに言った。

「シャベルは裏庭に出しておいたわ。
 深く埋めてちょうだいね。
 明日、そこに山野草を植えるから、あとで教えてね。
 今夜は泊まっていきなさいね」

妻は箱から老いた三毛猫を出した。

「チコ・・、カレンと安らかにね」

カレンが亡くなって15年目。
一昨日、チコが死んだ。老衰と診断された。
寿命をまっとうして亡くなったのだ。
カレンの分まで、生きてくれた。


昔、実家の脇道にあった側溝は、もう完全に道路の下に埋められて、道幅も広くなっている。
この10年で、畑だった所に家々が建ち、深夜でも頻繁に車が行き交う道になった。

私 「チコとカレン、同じ時期に死んだなぁ・・」

私はシャベルを洗って、物置にしまいながら言った。

妻 「うん。ねぇ、あなた、見て?」

妻が頭上の夜空を指して言った。

妻 「雲が流れてるの。その隙間に、星が見える。
   あれ、なんて星か知ってる?」

私 「いや」

私は妻の指差す方を眺めた。

妻 「あれ、あのオレンジ色の星ね、
   アルクトゥールスって言うの。
   一等星よ。
   この時期に見える星で、有名なのよ」

私 「へぇ、そうなんだ」

私は15年前に眺めた星を思い出した。

あの星は、アルクトゥールス、か。
あの時の星だろう。
星だけが変わらないでいる。
不思議な気持ちで眺めた。
星を眺めている妻の横顔を見て、私はまた思い出した。

 『ねぇ、あなた・・
  私たち、できるだけ長く、今度の家に住まなきゃね。
  簡単に越したらいけないわね。
  こんな代償をはらってしまったから・・』

妻はそういって、泣きながらカレンに土をかけていた。
 
今、チコに土をかけた妻は、夜空を眺めている。
晴れやかな6月の流れ星を待っているかのように。


------<完>

■□■………アトガキ
短編と言いつつ、長々と引っ張ってしまいました。
どーも書きたいこと、真髄に辿り付くまで文章が長引き、
毎度、何を書きたいのか途中で解らなくなってきます(^^ゞ
今回は体験談でしたので、なんとか5回で〆られました。
ご愛読、どうも有り難うございました。
ご感想など頂けたら、嬉しく思います。

次回は・・7月にちなんだ話を。初夏の楽しい話を考えます。
何か、ネタになりそうな情報があったら、教えて下さい。
お待ちしておりまーす。/駒吉

6月の流れ星の目次



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6月の流れ星-4-

4、カレン

双子猫の1匹、チコがいない。
私たちは屋敷周りを探した。
時々、車の中を覗いては、
バックに入れた猫たちの様子も伺った。


妻は『この時間に車は通らない』と、自信満々に言った。
が、すでに2台の車が通過して行った。

私 『時々、車が通るよ。注意してね。
   あなたは何でも言い切るけどねぇ』

縁の下を覗いていた妻に、私は聞えるように言った。

妻 『あらそう?通った?てことは、最終電車で帰って来た人かなー。
   電車が終われば、もう来ないわよ。
   うーん・・
   縁の下にもいないわねぇ。
   チコ!おーぃ(笑)どこにいるのか♪チコー。
   だーれかぁ♪チコちゃんをー知らないかぁ~♪』

妻は古い唄の曲に乗せて、ふざけて歌った。
明日から、東京での生活が始まる。
猫大移動の引越しを楽しく思っていたのだろう。


私 『まじめに探せよ・・』


私たちが懐中電灯を持って、庭先をうろうろしていると、
縁側に来た義母が声をかけた。

『あんたたち、まだいたの?そこで何をしているの?』

猫が1匹、いないんですよ・・そう言おうとして、義母を見た。
何気なく義母の立つ廊下の奥を見ると、暗がりに猫らしき姿が見えた。

あ!いた・・チコだ!見つけたっ!

『お義母さん、その廊下の端に猫がいますよね?
 ソイツを探していたんですよ』

『はいはい。まぁまぁ、こんな所に隠れて(笑)』

義母がチコを抱いて来た。妻もチコに気がついた。

妻 『なんだぁー!家の中にはいっていたんだ~。
   もぉー!チコちゃんたら!置いて行っちゃうぞー』

妻が呆れたような、ホッとしたような声で言い、
私は義母からチコを受け取った。

チコは震えていた。

今思えば、猫大移動の様子に、パニクったのかもしれない。
1匹づつ、縁側から消えていく様子・・
みんなはどこに行くんだろう、自分もどこかへ運ばれるのか?
そう思って不安になり、家の中へ隠れてしまったのか。
それともチコは・・

義母 『1匹くらい、置いていってもいいわよ(笑)
    気をつけて帰りなさいね』

私 『飼えなくなったら、お願いします(笑)』

妻 『じゃ、お母さん、またね!
   おやすみなさーい』

義母が雨戸を閉め始めたので、私はチコを抱いて車の置いてある裏木戸へ向かった。
あとから妻も駆け寄ってきた。
裏庭を歩きながら、妻が言った。

妻 『チコ、あなたにダッコされて、おとなしいじゃん』
私 『いや、嫌がってるよ。暴れそうだ』

その時、こちらに向かってくる車のライトが遠くに小さく見えた。

私 『あれ見なよ。いいかげんなコト言って』

妻 『あらホント(笑)近所の人ね。夜遊びした帰りかなー。
   ねぇ、ちょっとチコかして?落ち着かせるから』

妻が手を伸ばした。
私は、確実に近づいて来る車をアゴで指しながら、

私 『待って。あの車、こっちに向かってる。ここを通るよ。
   危ないから、通過するまで待っていよう。
   怖がって震えてるし、ツメも立ててる。
   すり抜けたら、ヤバイよ』

妻 『大丈夫!
   チコはねぇ、抱かれるのキライなコだからツメを立てるの。
   ねぇ、かして?私が抱けば、怖がらないわよ。
   なれてるから大丈夫。
   車のドア、開けといてちょうだい』

妻は私から強引にチコを引き離そうとした。

私は(強引な妻に逆らうのも面倒だったので)、
言われるがままにチコを預けて、素早く車へ向かった。

妻 『あらやだぁ、違うじゃないの』

チコを抱いた妻が、驚いたように何か言った。
暴れるチコに何か言っていた。

妻 『どうしたの?あはは。そうなの?
   ほらほら、じっとしてて』


助手席のドアに手をかけた、その時、後方で妻が叫んだ。

妻 『痛っ!!ああ、逃げたっ!タイヘン!
   あー、そっちへ行った!気をつけてー。
   車が来てるから!早く捕まえて!
   そっちへ行ったわ!』

私が振り返る。『えっ、どこ、、』  


その瞬間に起こったことは、一瞬だった。
一瞬にして、全て同時だった気がする。
一瞬にして、同時に見た光景だった。

私が助手席のドアに手をかけた瞬間。
妻が『そっちへ・・』と叫んだ瞬間。
白い車が、徐行もせず通過した瞬間。
ボールの様なモノが飛び出した瞬間。

全てが同時進行、そんな瞬間だった。
何をも止めることはできなかった。

チコが轢かれた!

チコは、私の足元に近い側溝のフタの上で痙攣していた。

駆け寄って見ると、すでに瞳孔は開きかけ、虫の息だった。
大きな外傷はなかった。
頭を打ったのだろう。
チコは鼻と耳から少しだけ出血していた。

妻も駆け寄り、抱き上げて喚いた。

妻 『早く!
   早くカレンを病院へ。
   カレン!カレン!
   カレン、死なないで』

私 『え?(カレン?)』

妻 『カレンなの。カレンなのよ、このこ。
   まだ生きてる!息してるから!
   仮死状態で生き返るかも知れない。
   失神してるだけかもしれない。
   早く病院へ連れて行って!
   この時間でも、頼めば診てくれる!早く行って!』

私は急いで車に乗り込み、エンジンをかけ、助手席を開けた。
しかし、妻が来ない。
まだ路肩の側溝のそばで、突っ立ったままだ。

『何してるんだ!早く乗れよっ!』 私は妻に怒鳴った。

妻は、ゆっくりと歩いて来た。
シートに半分だけ腰をかけ、両足はドアの外に伸ばしたまま、
猫を抱きながら、私に背を向けて言った。

妻 『もういいみたい。今、大きく痙攣した。
   心臓が止まった。カレン、今、死んじゃった。今。
   ・・もう息をしてないの』

私 『え。そんな。まだ解らないだろ?
   いいから、ちゃんと乗れよ!』

妻 『ごめんなさい。私が。
   私がカレンを殺しちゃった』

妻は私に背を向けたまま、泣いていた。
カレン、と呼びかけながら猫の頭をなでていた。

私 『カレンだったのか?チコじゃなくて』

妻 『カレンだった。抱っこして解った。
   カレンだったの。初めて私を引っかいた。
   嫌だったんだね・・』

妻は死んだ猫の体に顔をうずめた。

妻 『カレン、カレン、ごめんね。
   引越しが嫌だったのね・・。
   ここに居たかったのね。ごめん』

私 『・・・』

妻は泣きながら後悔の言葉を呟いていた。

箱に入れておけば良かった・・
私が抱かなきゃ良かった・・
ちゃんと捕まえておけばよかった・・
今の今まで・・元気に生きていたのに・・

私も自分を責めていた。
辛かった。
妻の呟きが、耳障りなものにも思えた。
何も聞きたくなかった。



ことごとく私に逆らっていた妻。
妻の我侭の言いなりになっていた私がいた。
その結果、こんな事故に合ったような気がした。
泣いている妻に、慰める言葉も浮かばなかった。
無性に悔しかったのだ。
自分に。
 
カレンを特別に思っていた妻の心情は計り知れないが、
その特別な猫は、引越しの晩に失ってしまったのだ。
妻だけのせいではない。

カレンは、引越し気分に浮かれていた私たちの、
浮薄な行動のはての、犠牲になった猫だった。


------次回-5-(最終話)へ続きます・・

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6月の流れ星-3-

3、チコ

引越しとはいっても、全ての生活用品を運んだわけではない。
実家から荷物を運ぶということで、当面必要なもので済んだ。
これから夏を迎えようとしていた季節だから、
暖房器具や、冬服などは押入れに置きっぱなしでよい。 

こんなとき、いつでも取りに来れる距離にある、
都心に近い妻の実家は便利だ。それは今でもそうだ。
 
私 『お義母さん、
   今から出ても、向こうに着くのは24時を過ぎます。
   戸締りしたら、二人とも寝て下さいね。
   来週も休みだったら、また二人で来ますよ』

私はそう言って、車を車庫から出し、
勝手口に面した道路際に車を停めた。


妻が往復してバックを運び、私が車内で受け取り、
仕事で使う他の荷物と整理しながら、安定良く積み込んだ。
乗せっぱなしのカラ箱もいくつかあった。

妻がバックを運び込んでいる間、
双子猫の1匹が、妻の後を付いてまわっていた。
それが危なっかしくて、気になった。

私 『ここに小ぶりのちょうどいい箱があるから、
   双子猫たち、やっぱ箱に入れて行こうよ』

妻 『大丈夫!
   でも、もし入れるなら、チコにしようか。
   騒ぐからね。
   カレンは膝に乗せて行きたい!ワンちゃんみたいに』

私 『うん、好きにしていいけど、とりあえず入れようよ』

 
妻 『これ見て?カレンたら、私が何を運んでいるのか、
   興味津々なのね。
   ずっと後を付いてまわってるの!
   置いていかれると思ってるのかな~』

私 『危ないからさ、とりあえず箱の中に入れるよ!』

妻 『この時間に、この道を通る車はないわよ。
   地元の人しか道が解らないもの。
   この辺の人は、もう寝てるわよ~』

妻は笑って引き返した。
私はまだ足元にいたカレンを拾いあげて、箱の中に入れた。
そばにあったガムテープで軽くとめ、出られないようにした。

カレン、暫くガマンしろよ。
小さくたって、パニクったら噛み付くだろう?
いっぱしの猫だもんな。

私が呟くと、カレンは可愛らしい声で鳴いた。
妻が抱いていくと騒いでいたので、
カレンを入れた箱は助手席に置いた。

いよいよ10個目を乗せて、残るは双子のもう1匹だ。
ヤンチャだと言われるチコを箱に入れて、イザ出発だ。

私は箱を持って待った。

すると、妻が不安げに戻ってきた。

妻 『いないの・・チコが』

私 『いないって?
   カレンは、とりあえず箱に入れたよ。
   チコ、その辺にいるんじゃないか?』

妻 『うーん・・。
   それが、今思ったんだけど・・
   チコって、いつからいなかったんだろう・・』

私 『え?・・さっきまで芝生に2匹がいたよ?
   ワタシが車を出すときも・・』

妻 『うーん・・。
   でも、庭にいないのよ。声もしないの。
   一緒に探して?』

私 『なんなんだよ・・。
   だから、居る時に捕まえておけば良かったんだよ』

妻 『そんなこといったって~。
   すぐ捕まると思ったんだもの~。
   そうねぇ(笑)・・チコは、ちこちこ歩くからチコ、
   カレンは、大人しくて可憐なイメージで、カレンだから。
   ちこちこ歩いて、チコは、どこか行っちゃったかな~』

私 『そんなことは、どうでもいいって。早く探そう』

妻は笑っていた。

私は出端を挫かれた思いと、妻に任せた段取りの悪さに、
いささかイライラした。

チコ~、どこへ行ったんだ~

しかし、チコの姿は見当たらない・・。
いったい、本当に、どこへ行ってしまったのか。

私たちは、チコの名を呼びながら庭の隅を探し回った。
猫たちの鳴き声が、開いた車窓から聞こえてきた。
箱の中のカレンだけが静かだった。


------次回-4-へ続きます・・

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6月の流れ星-2-

2、双子猫

すっかり日が落ちた。

私たちは10個のペットバックを縁側廊下に並べ、
マタタビのコナを内側にまぶしておいた。
外遊びから帰った猫が、腹を空かせて戻ってきた。

マタタビの匂いに誘われて、玄関から廊下へ直行する猫、
台所へ行こうとして私たちに捕まる猫、
仲間の入れられたバックの周りを不思議そうにうろつく猫。
いずれも9匹の猫がスンナリと捕まって、バックに入った。

総勢12匹の猫のうち、1匹だけ、私たちに全くなつかない猫がいた。
 
人間嫌いの、トウちゃんと名づけたオス猫が、
早くも殺気を感じたのか、奥の廊下の隅で身構えてしまった。
トウちゃんは、当時の我が家のボス猫的存在だった。
ツメも切らせてくれない。構えられては・・人間の方が危ない。

『あの仔は・・ここ(実家)の猫にしようか?』
妻が笑って言った。

『最悪は・・そうなるね。
 しかし、ここでの生活の方が猫は快適だろう』

私は猫缶を皿に盛り、トウちゃんの前に差し出す。
素知らぬフリをしながら、トウちゃんに注目、食べ始める時を待つ。

すでにバックに入った猫たちは、マタタビに反応して静かだ。
双子の三毛猫が、バックの上に乗り降りして遊んでいた。

私 『コイツら、あなたのヒザの上に乗せていくの?
   危ないな』

妻 『チコはヤンチャだけど、カレンは大人しいから大丈夫!
   チコだけ、押さえていれば(^^)』

私 『うーん・・。
   しかし、こうしてみると、この2匹、
   ワタシには、どっちがチコかカレンか、
   解らないなぁ』

本当に解らなかった。
ヤンチャと言われても、私は猫たちの昼間の活動を知らない。

妻 『こっちがカレンよ。あっちがチコ。
   カレンは大人しいから、すぐダッコされるの』

妻がカレンと名づけた三毛猫を抱き上げた。
『カレンはね・・私にベッタリなの。
 洗濯物を干してる時も、私から離れないのよ』

私『ふーん。姉妹でも性格が違うんだ?(笑)
   でも一応、フタのできるダンボール箱を用意しておくよ。
   道中、発狂して車内で暴れたら危ないから』

その時、トウちゃんが皿の方へ寄って来た。

トウちゃんは、警戒しながらも皿の匂いをかぎ、
ゆっくりと食べ始めた。
食べながらも、その目は私たちを見つづけている。
私たちは双子猫をなでたりして、彼を油断させた。

トウちゃんの目が、皿の上に集中した、その時、
私は後ろ手に周って、トウちゃんを押さえた。
妻がバックの口をあけて、即座に押し込む。
二人がかりで、トウちゃんをバックに押し込む。
大成功。

トウちゃんはバックの中で暴れながら、太い声で鳴いた。
トウちゃんが鳴き出すと、他の猫たちも鳴き出した。

居間から義母が来て、私たちに声をかけた。
『お茶でも飲んで、それから行きなさいよ。
 お父さんもまだ起きてるから、行く時は一声かけてね』



捕獲が難関だと思っていた猫も無事に確保でき、
いつでも出発できる状態になった。 
妻が縁側の雨戸を開けた。
空を見ると、雲の隙間から星が出ていた。

『今夜が見納めだから(笑)
 マンション猫になったら、二度と外には出せないもの。
 この庭を見せておいてあげたいの』
妻はそう言って、猫たちの入ったバックを庭先へ向けた。

双子猫が庭に出た。
二匹は芝生の上で追いかけっこをはじめた。
ペットバックに入れられた10匹の猫たちが、
その様子を恨めしそうに眺めていたか否かは、
解らない。

私 『双子猫も、箱に入れておいた方がいいんじゃないか?』

妻 『平気よ。すぐ捕まるから』

私たちは、世話になった妻の両親に、
出発の挨拶をしようと居間へ移動した。

------次回-3-へ続きます・・

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プロフィール

美月

Author:美月
家族は、夫と母と愛犬3匹、愛猫3匹、熱帯魚。
2015年春まで都内在住。
2015年春から隣県の実家暮らし。

2017年秋、放置気味のブログをこちらに移行して、ワンコ日記を再開。
再開のキッカケは、きくみみに、弟分(たび)ができたから。

ガーデニングブログも、こちらに移行しました。

【主 now The きくみみ&たび】とは、
【シュナウザーきくみみ&たび】
主人公(主犬公?)は愛犬たちという意味です(^^)

-------------------------
注)
2017年10月以前の記事のページは、3つのブログがこちらに移行されていますので、
記事内容のダブりがあります。
少々ウザイ状態ですが(^^ゞ
リンク先が不明ページも(ここに移行して載せていますので)実は、あるのですょ。


猫の創作話は【駒吉(愛猫の名前)】で綴っています。

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