主 now The きく♥みみ&たび 猫☆創作・泣いた石松
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12 【泣いた石松】<完>

にょめごと神社の境内に入ると、社の縁側に1匹の猫がいました。

石松 「おい、そこにいるのは誰だぃ?どこのシマのもんだ?」

石松は立ち止まり、その姿をじっと見つめました。 

一松 「石松、ひさしぶり。僕だよ。忘れたのか?一松だよ」

今度は一松が石松に近づいてきました。
一松の姿がはっきり見えた時、石松は驚いて後ずさりしました。

一松の右の耳は、鋭いナイフのようなもので切られたような傷があり、
その目も堅く閉じられていました。
一松は、見えるほうの左目をしっかり見開きました。
まるで、喧嘩猫の形相です。

一松 「ははは。驚かないでくれよ。
     一緒に遊んだことを忘れてしまったか。
     無理もないね。迷子になって、ひとりぼっちで生きていたんだろう」

一松は同情の気持ちを込めて優しげに言いました。

石松 「・・・そのツラはどうしたんだ?」

一松 「あの時さ。僕らと母さんが森の道を散歩してる時に、
     突然、出くわした人間にヒドイメにあっただろう。
     母さんは、必死で僕らを守ってくれた。
     僕らは、このあたりに逃げ込んだ。
     そして大きな鳥が襲って来た。
     お前は奥の森へ逃げた。僕は、あの時の鳥にやられたんだ」

石松 「けど、あんたは、ちゃんと家に戻れたね。傷も治ってヌクヌク暮らし。
     おいらはゴミあさりの野良猫ですぜ?」

一松 「ああ。僕は運が良かったよ。
     母さんは、弱った体で僕らを探しに来て、僕を連れて帰った。
     お前のことも探したんだよ。お前はどこにも居なかった」

石松 「そんなこと知るかよ。
     1度でも森の集会に出たことあるか?
     出ていたら、おいらを探すなんざ朝飯前さ。
     おいらはな、坂中では知られた猫よ。
     探す努力が足りなかったぜ。
     ホントは、おいらのことを知っていて、
     野良猫になってる姿を眺めていたんじゃないの」

そこへ白玉が口を挟みました。

白玉 「石松さん、あのね、
     一松さんの傷は・・あなたを守るために負ったそうよ。
     石松さんが森の中へ逃げ込めたのは、
     一松さんが囮(おとり)になったからなの」

石松はクスクスと笑いました。 
石松 「さすが、おいらの兄貴だ。
     テメーが逃げ遅れて負ったマヌケな傷をそんな美談にしちまうとはね。
     白玉ちゃん、また騙されちゃってさ。ばかだなぁ」

一松はニッコリと笑いました。
一松 「そうだね。石松の言うとおりだ」 
一松の左目がキラリと光って、泪の雫が落ちました。
 
一松 「僕は、そろそろ帰るよ。こんな顔だから夜は出歩かない。
     喧嘩猫と誤解されて因縁でもつけられて、
     見えるほうの目まで潰されたら堪らないからね。
     石松と会えて良かったよ。これからは、困った時はいつでも来てくれ。
     腹が減った時とか、な。きっと悪いようにはしない。待ってるよ」

石松 「そんな都合よく出入りしていいのかよ?いいのかよ?
     いいのかよ?いいのかよ・・・いいのかってんだ!」

石松が怒鳴ると、一松の姿は縁側からパっと消えました。

と同時に、空から沢山の落ち葉がハラハラと舞い落ちて、
石松の体を包み込みました。

(うわぁ~。なんだ!何が降ってきた?)

その重さで倒れこんだ石松は、驚いて起き上がり、
枯葉を掻き分けて、払い落とすと、パっと太陽の陽射しが見えました。

あたりを見渡すと、そこは自分のねぐらの倉庫の入り口です。
廃屋になった倉庫の雨樋に積もった枯葉が、重くなった勢いでひしゃげたようです。
外れ欠けた瞬間に、溜まっていた落ち葉が石松の寝ていた体を包みました。

小春日和の暖かな冬の陽射しが差し込めていました。 
石松はワケがわからず、暫く呆然としていました。

(夢か?・・・おいらは夢を見ていたのか?) 

 「石松、大丈夫?」そばには、お玉がいました。
お玉は積もった枯葉の上で香箱をくみ、石松を眺めていました。

石松 「夢か・・・すげー夢だ。まるで現実のような夢だったぜ。
     おいらに兄貴猫がいたんだ。白玉ちゃんも夢に出てきた!」

お玉は笑いました。

お玉 「風邪はなおったようだね?良かった。
     私が拾ってきたマタタビをかじりながら、
     あんたはウトウトしだして寝ちゃったのさ。
     長いこと眠りこけていたよ。
     毎年、秋になると白玉が届けてくれたけど、
     今年は来ないねぇ。梅雨の頃から姿が見えないよ。
     突然いなくなったねぇ」

石松 「白玉ちゃんも野良猫だからさ。
     ヘンなもんでも食っちまったかな~」

お玉 「私も今年は危ないわ。ここは寒い」

石松 「大丈夫さ。なんとかなるって」

お玉 「あんたは野良猫だもの。まだ若いしね。
     ひと冬ふた冬は楽に越せるだろけど。
     野良猫は4度目の冬は越せないっていうからね」

石松 「お玉は、野良猫になって何度目の冬か?」

お玉 「まだ2度目だよ。だけどね、歳をとってから野良猫になるのはキツイ」

お玉は小さくなった体をもっと小さくして、香箱をくみ、
腕の中に顔をうずめました。

(お玉、昔は嫌がって入ろうとしなかった奥の森へ行って、
 マタタビの実を拾ってきたのか)

石松 「ありがとよ。あんなとこまで拾いにいってくれて。
     お蔭様で、すっかり体が楽になった」

すると、お玉は嬉しそうに顔をあげて言いました。

お玉 「まだあるんだよ、ここに。
     奥の森にはイッパイ落ちてた。また拾いにいくよ。
     あんたに世話になって、何かお礼をしなきゃと思ってさ」

石松 「なーんも世話なんてしてねぇよ。気にするな」

お玉 「このマタタビを食べて寝ると、私はね、
     人間様の家にいた頃の夢を見るよ。
     もう、私には縁のない暮らしだけどねぇ」

石松 「ああ、あの火事になった家かぁ。集会の晩だったなぁ。
     お玉は集会に出てたから助かったんだって夜の、な。
     まぁ、しかたないさ。それも運命、これも運命」

お玉 「今でも思い出すねぇ。家の人の声。
     お玉~、お玉~って。
     あんたも可愛がられていたねぇ」

石松 「そうだっけかな?
     おいらは、たまーにしか顔出ししなかったからなぁ」

お玉 「あんたは、にょめごと森の松の木の根元にいたんだよ。
     仔猫だった。
     怪我して動けなくて、石のように固まっていたね。
     で、私が付けた名前が、石松さ」

石松 「何度も聞いてるよ。だけどね、おいらは捨仔じゃないぜ。
     もとは家持さ。ぜったいそうさ。
     おいらには兄貴猫もいた!さっき夢の中に出てきた!
     そこへ行けば歓迎される!」

お玉 「石松・・・」

石松 「ん?・・・
     さてと、そろそろ、出かけるかな。寝すぎて腹がへったなぁ。
     お玉、付いて来れるか?
     もしかしたら、ご馳走にありつけるかもしれねぇぜ!」

お玉 「まーた、たわ言を言って振り回すの。
     今度はどこのお宅へ行くの?
     まーた、でっかいワンコと出くわすんじゃないだろうね。
     私はもう逃げる元気はないわ。
     街なかで干からびるのも嫌だよ。
     だけど、おなかは空いた。あんたに付いて行こうかね」

石松 「今度は正夢さ。おいらの兄貴が住んでる家だ!行くぜ!」

お玉は立ち上がろうとして、よろけて、そのまま枯葉の上に倒れこみました。

お玉 「あれま。体が重たいこと。ゆっくり付いていくから、お先に行って」

石松 「どうした?お玉」
石松は、お玉を見ました。

お玉は横になったまま目を閉じ、両手を伸ばしてから体を丸めました。
そして、か細い声で言いました。
お玉 「ごめんねぇ、、石松。私はここで待ってるよ。
     もう、どこへも行けやしない。これ、あげるから」
お玉は腕の中に抱えていたマタタビの実をポロポロと出して、石松に差し出しました。

石松 「わかった。待ってろ、お袋!兄貴の家を探して、何か食い物を頂いてくるぜ!」

お玉 「ははは、お袋だって?嬉しいね。
     私はもう、これがなくても眠れるよ」

石松 「あんたは、おいらの名づけ親じゃないかよ。お袋みたいなもんさ。
     いいか、お玉、
     この町には、お玉って名の付くメス猫がいっぱいいらぁ。
     だけど、おいらの一番大事なお玉はな、お玉って猫はな、」

石松の目に映ったお玉は、小さな切り株のようでした。

石松は、落ち葉をかき集めて、その小さな切り株を隠し始めました。
お玉が寒くないように、寒くないようにと願いながら。

もう、お玉がどこに寝ているのか、石松にもわかりません。
お玉を枯葉ですっかり隠してしまうと、石松はマタタビを拾ってフラフラと歩き出しました。

そして夢で見た兄貴猫の家とは別の方向へ向かいました。

♪おいらは野良猫、名前は石松。
♪仔猫じゃないぜ、年寄りでもない。
♪威勢のいい若猫だ。

いつのまにか、石松は鼻歌を歌っていました。
森を抜ける間、白玉の姿を探しましたが、出会うことはありませんでした。
遊歩道を突っ切って、古いアパートの庭先に入り込むと、石松は叫びました。

「おーぃ!お玉ちゃーん、マタタビの実を持ってきたぜー」

すると、アパートの玄関から1匹の娘猫が出てきました。

「あら石松、ここんとこ顔を見せなかったから心配してたのよ。
 今夜はカラアゲよ。間に合ったわね。今、お婆さんが揚げてるわ」

【泣いた石松】<完結>

タラタラと書かせて頂きました。
ご愛読、どうも有り難うございました。/駒吉

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11 【兄弟猫の運命】

石松 「白玉ちゃん、どこへ行くんだ?」

白玉は、にょめごと森のはずれにある坂中の一軒家の前に向かっていました。

白玉 「石松さんに会わせたい猫がいるの。お兄さんかもしれないわ」

石松 「おいらの?兄貴?そんなのいねーぜ」

白玉 「でもね、あなたに全体ソックリなの」

石松 「ソックリったって、兄弟とは限らねぇ。喧嘩になるのがオチですぜ」

二匹の猫は、にょめごと森をぬけて、一軒家の裏庭に着きました。
白玉は小さな声で、一松の名前を呼びました。

「一松さーん、石松さんを連れて来たわ」

石松はドキっとしました。
ここらあたりのノラにも、ハンノラにも知り合いはいません。
一松という名前の猫も、聞いたことがありません。
(白玉・・おいらを騙まし討ちにするんじゃないだろうな)

石松 「おい、白玉ちゃん・・おいら、帰るぜっ」

石松がもと来た道を帰ろうと踵をかえすと、それを引き止めるかのように、
薄暗い庭の木か、空か・・石松の頭上あたりから声がしました。

「石松・・、石松だね。間違いない!弟の石松だ!
 石松、生きていたんだね!
 待っていたよ!石松!みんなが待っていた!」

石松はギクリとしました。
その声は・・聞き覚えがあったのです。
振り返ってみましたが、そこに居るのは白玉の姿だけ。

白玉 「一松さんは、あの2階のベランダにいるの。
     でも見ないで!見ちゃだめ!
     まだ、あなたの前には出たくないそうよ」

石松 「一松って、ここに住んでいるのか?この家に?」

白玉 「ええ。そして、たぶん石松さんもここに住んでいたの」

石松 「覚えてないなぁ。全く覚えてない!」

白玉 「さぁ、行きましょう。ここの家の人に会ってみるのよ。
     何か思い出すかもしれないから」

白玉は玄関の方へ廻りました。
そして大きな声で何度も鳴いてみました。
玄関の戸を開けた人間は、石松の姿を見て驚きました。

「石松~!石松が帰ってきた~」

(ん。確かに、おいらは石松さ。だけど、こんな家にいた記憶はない!
 それに・・おいらは、お玉の家の婆さんに・・)

石松の記憶には、人間との触れ合いが、お玉の家の婆さんくらいしかないのです。
その婆さんとも、どこで出会ったのか・・覚えていませんでした。

一松の姿はありませんでしたが、一松の家の人が何かわめいています。

「石松が帰ってきた!早く、何か食べ物を持ってきて!あの、カラアゲ!カラアゲでつろう!」
「誰か、逃げないように見てて!良かった~。一松はどこ?一松に会わせよう~」
「一松はいいから~。早く、カラアゲ持ってきて~。石松が逃げちゃうよぉ~」

と、そこへ、カラアゲのお皿を持った家の人が出てきて、石松に近寄って来ました。

(えええ!!!おいらの大好物!なぜだぁ???驚き~)

石松は思わず白玉の顔を見ました。
白玉は、目で合図をしました。「それ、頂きましょ!」

二匹は、差し出されたカラアゲをそろそろと食べ始めました。

(ああ~残念だ!おいら、さっき、お玉のトコでメシを食ったばかりで、
 これ全部は食えねぇ・・だけど食いたい!だけど食えねー。
 無理して食ったらハラを壊す・・だけど、食いたい!)

石松はカラアゲの匂いを嗅ぎながら、舌打ちをしました。
白玉は美味しそうに食べています。

(おいら・・ここに住んでいたのか・・)
石松は、改めて家の様子を眺めてみました。
石松を見つめる人の目・・確かに懐かしさを感じます。
キョロキョロと、あたりを見渡している石松の頭に、人間の手が伸びてきました。
石松は反射的にそれを避けました。
白玉は驚いて食べるのをやめて、後退りしました。

石松 「白玉、おいら行くぜっ!あばよ!」

石松は一目散に森の方へ走りだしました。
そのあとを白玉も追いかけました。

遠く人の声がします。「石松、逃げちゃったよー」
「あっちへ行った!」「森林公園に入って行ったー」


石松と白玉は、にょめごと森の奥の森あたりまで来ていました。

白玉 「石松さん、どうして逃げたの?あなたの家でしょ。何も覚えていないの?」

石松 「覚えてない!なんも。思い出すかよ!」

白玉 「あのね、私ね、今日、いろいろ一松さんから聞いたの。で、もしかしたらと思って」

そういいながら、白玉は笛を吹き始めました。
その曲は、一松が好きな曲でした。
始めて一松に拍手をされた曲でした。

(あ!この曲、おいら知ってるぞ・・なんだっけ!)

白玉 「思い出して。石松さんが小さかった頃」

石松 「あ!母さんが唄ってたんだ!母さんの曲だよ!」

白玉 「そうよ、石松さん!これね、一松さんもそう言ってたの。
     この曲はね<白猫の祈り>といって、
     猫達が幸せになれるよう願う祈りの曲なの」

石松 「ああ!そうさ!兄貴がいたぜ!おいらといっしょに聴いてたっ!兄貴がいた~」

石松は思い出しました。一松という名の兄貴猫がいたこと。
一松と石松はソックリな猫で、家の人が間違えて呼んでいたこと。
石松には他にも兄弟がいて、兄弟たちはどこかへ貰われていったこと・・。
次は自分の番だと母猫に言われていたこと・・。
だから、おまえが幸せになれるよう唄うのだと、母猫が言ったこと。

白玉 「そうそう!石松さんとソックリな一松さんは、お兄さんなの!」

石松 「おいら・・この森に、捨てられたんだ・・いや、兄貴と遊びに来て、
     兄貴に、兄貴に・・あ!もっと思い出したぜ!
     兄貴に置いてきぼりを・・いや、違う!」

石松は、すっかり忘れていた仔猫の頃を思い出しました。
(そうだ、思い出した!ここで兄貴に見殺しにされたんだ!)

石松 「今さら兄貴なんて呼べないわな。
     一松ってさ、あの家でカラアゲ食ってぬくぬくと暮らしているんだ。
     なーんか、おかしいぜ。
     おいらは野良猫になっちまって」

白玉 「一松さん、ずっと探していたそうよ」

石松 「ふーん」

石松は枯葉を蹴散らしながら歩きました。

石松 「あーあ!カラアゲかぁ~。食い損ねたなー。今度はいつ食えるやら」

白玉 「あのお家へ戻ってみたら?あんなに歓迎されていたじゃない」

石松 「やなこった!おいらを見捨てた兄貴のいるとこなんて。
     母さんには会いたいけどよ」

白玉 「お母さんは、もういないそうよ」

石松 「えええ!いない?」

白玉 「あの時のケガがもとで・・」

石松はハッキリと思い出しました。

石松 「おいら・・、おいら・・、襲われたんだ!人間に!
     そうだ!人間に!
     母さんと兄貴と、森で散歩してたら棒を持った人間にたたかれて。
     母さんは・・動けなくなって・・兄貴とおいらは、奥の森まで逃げた!
     そこで、おいらは大きな鳥にも襲われたんだ!あああ!そうだぜ!
     おいらが襲われて・・・兄貴は逃げた!ああ、あん時だ~。くそー」

白玉 「あの時、そう・・。ボコボコにされても、お母さんは家に戻れたそうよ。
     でもね、それから数日後にね。
     一松さんは、その時間帯になると、怖くて外に出たくないって」

石松 「ふーん!弱虫野郎が。どおりで一松、見かけないと思ったよ。
     二度と会いたくねー。おいらと瓜二つなんて気色悪いぜ!」

白玉 「やっぱり何か勘違いしてるわね」

石松 「ふん。あのな、言いたかないけど、白玉ちゃん、
     あんたが勝手に誤解して、マタタビをくれたの。
     おいらが欲しがったワケじゃない!
     あんたが勝手にくれたんだ!返せったって、もう、ねーよ」

白玉 「マタタビのことは、もういいわ」

にょめごと神社の前に来た石松は、白玉とは逆の道に曲がろうとしました。
白玉も、自分のねぐらへ向かおうとしました。
すると、神社の境内のほうに、ポツリと光るものがひとつだけ見えました。
白玉は、まかさと思いました。

石松 「あれは・・仲間か?おかしいな・・合図してみっか?」

-次回へ続きます-

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10 【おいらじゃないのか?-その3-】

その日の日暮れ時、石松はお玉の家の台所で夕飯を食べていました。
他の野良猫たちは、お婆さんが用意したご飯を外で食べています。

石松は、白玉から貰ったマタタビの実をお玉に渡しては、
いかにも自分が奥の森から取ってきたふうに話していました。

そして約束どおり、お婆さんの目を盗んでは、
少しだけ開いている台所の窓から入り込み、
お玉のご飯を半分貰っていたのです。

 
お玉 「石松、どうもありがとう。
     雨の中も、拾いにいってくれたみたいで、ありがとね。
     コゾもすっかり元気になったし、もうマタタビの実はいらないね」

石松 「へ?じゃあ、おいらの飯・・また、アイツらと一緒に残り物かぁ。
     お玉ちゃんのは、美味しいのになぁ~」

お玉 「それはね、ココで食べる皿のせいなのよ。
     みんなと同じものを頂いてるのに、味が違うわけないでしょ。
     自分の皿があるってことが、美味しいこと。
     明日から、お婆さんが出してくれる夕飯を食べてね」

石松 「ああ」

お玉 「そろそろ寒くなってきたわ。
     今までより早い時間に来ないと、ご飯をもらえないよ」

石松 「ああ。わかってら」

お玉 「じゃ、またね。あんまり寒かったら、ここの縁の下に越して来なさいよ」

石松は台所の窓から外へ飛び出しました。

(だよな~。だーれも横取りしない、おいらだけの皿に盛られたものなら、
 なんでも美味しいかもなぁ~)

石松がにょめごと森を抜けようとすると、白玉がぱっと飛び出しました。

石松 「あ!ビックリした!白玉ちゃん!」

白玉 「こんばんわ、マツさん」

白玉は、石松の顔をじっと見つめました。

白玉 「ソックリだわ・・・一松さんに」

石松は緊張しました。
(そういえば・・白玉、おいらと誰かを間違えてた・・。
 まさか、マタタビを返せなんて言わないだろうな・・)

石松は黙っていました。

白玉 「あなたの名前は?一松さんのフリをしたわけは?」

石松 「おいら・・石松。白玉ちゃんこそ、おいらの名前を呼んだじゃないか。
     マツさんなんて呼ぶからさ・・おいら、自分のことかと思った」

白玉 「いしまつ、って言うのね・・・やっぱり」

白玉の瞳がキラリと光りました。

石松 「なんだよ。なんなんだよ」

白玉 「私についてきて。言うこときかないと、マタタビの実を返してもらうわ」

白玉は、自分のねぐらや、石松のねぐらとは逆の方向へ歩き出しました。

(マタタビ?そんなもん、あるかい!行くよ、行きますよ)

石松も白玉のあとに付いて歩き出しました。
二匹の猫は、冷えた森の中へ消えていきました。

-次回へ続きます-

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9 【おいらじゃないのか?-その2-】

それから数日、冷たい雨が降り続きました。
森は一気に紅葉して、落ち葉が舞い始めました。
少しずつ冬の香りも漂わせていきました。

濡れた落ち葉を踏むのは、猫だって嫌なことです。
一松との約束が気になっていた白玉でしたが、
落ち葉が乾くまで森へ行きませんでした。

太陽が出て、落ち葉も乾いた小春日和に、
白玉は奥の森へ出かけました。
すると、待っていたかのごとく、一松がやってきました。

相変わらず、白玉のそばに来る様子もなく、
少し離れたところから、白玉の笛の音を聴いていました。

白玉 「マツさん、マタタビの実は、その先にあるわ。
     あの雨で、いくらか落ちたと思います。
     一緒に拾いに行きましょうか?」

白玉が一松の方へ声をかけると、意外な返事が返ってきました。

一松 「僕、マタタビのニオイ、嫌いなんだ・・。
     ごめん。
     だから、僕はそこまで行けない・・」

白玉は少し不愉快になりました。

白玉 「マツさん、気まぐれなことばかり言うのね。
     何が本当のことなのか、わからないわ。
     私に採りに行けと言いたいなら、そう言っていいのに」

一松 「いや。そうじゃないよ。
    前に話したよね?弟猫のこと。
    アイツは・・マタタビのニオイにつられて森へ入ったんだ。
    僕は追いかけた。
    するとね・・大きな鳥が来て、弟をさらって行こうとしたんだよ」

白玉 「そう。可哀相なお話だこと。
     だけど、おとといの口ぶりじゃあ、
     どうでもいいことだって笑ってたわ」

一松 「笑った?笑って話せることじゃないよ」

白玉 「マツさん、今からそこへ行くわ。待ってて」

白玉は遊歩道にいる一松の方へ向かいました。
一松はあわてて帰ろうとしました。

白玉 「待って!マツさん、私からマタタビの実を貰って喜んだじゃないの。
     森の奥だろうが、端っこだろうが、どこだって入っていけますぜ?
     って言ったでしょ?嘘なの?
     どうして、そんな嘘を?どっちが本当のことなの?
     私の笛の音、うまいとか言ったのも嘘なのね?
     みんな、みーんなデタラメなの?」

一松は立ち止まり、白玉が来るのを待ちました。
白玉は、顔を背けている一松のそばに来て、言いました。

「どうして、いつもいつも、逃げ腰なの?
にょめごと森の神社で話したマツさんと違うみたい」

一松は俯いたまま、「それは、僕じゃないよ」と言いました。
「僕の顔ね、一度見たら忘れないから・・」

(え?)白玉は一松の顔を覗き込みました。

「この、僕の目ね・・」
そう言いながら、一松は顔をあげて、白玉を見つめました。
白玉は一松の顔を見て驚きました。


-次回へ続きます-

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8 【おいらじゃないのか?-その1-】

石松は、ねぐらに帰る途中の道で、
白玉が奥の森から出てくるところを見かけました。
(あ!白玉ちゃん・・ちょうど良かったぜ!)

石松 「おーぃ!白玉ちゃーん」

白玉は、毛に付いた枯葉を払いながら、石松を見て驚きました。

白玉 「あら、マツさん・・どうしたの?戻ってきたの?」

石松 「戻ってきた?いや、この間のお礼を言おうと思ってさ」

白玉 「ああ、マタタビの?(笑)
     (そうねぇ、そういえば、さっきは何も言わなかったわ)
     いいの、気にしないで。ほんの気持ちだから」

石松 「ほんの気持ちったって、3つも貰っちゃってさ。ありがと。
     最近のおいら、体調を崩してたから、助かったよ」

石松は、その場で思いついたことを言いました。
特に嘘をつこう意思はなかったのですがね。
石松にしてみれば、その場しのぎの受け答えは得意分野です。

白玉 「なら、これもあげる」

白玉は、先ほど拾ったマタタビの実を石松に差し出しました。

石松 「え?いいの?」

白玉 「どうぞ。体は大事にね。でないと散歩もできないし、
      私の笛も聴けなくなるでしょ?」

石松 「へへ。そうだね。白玉ちゃんの笛の音は素晴らしいからなぁ」

石松は、また適当なことを言いました。
月夜の晩の演奏会の時、石松はろくに音楽を聴いていませんでした。

白玉 「私もマツさんの拍手のおかげで、新曲を作る意欲もわいてるの。
     どうもありがとう」

石松 「いやいや・・そうかな(^^ゞ」

石松は、演奏会で拍手なんてしたことがありませんでしたが、
きっと白玉には自分も拍手をしているように見えたのだと思いました。

石松 「白玉ちゃん、このマタタビの実って・・どこにあるんだ?
      おいらにも教えてくれよ。今度、連れていってくれ」

白玉 「いいけど、奥の森よ?入れるの?無理じゃなくて?」

石松 「てやんでぇ、こちとら生粋の野良猫だぜ?
     森の奥だろうが、端っこだろうが、どこだって入っていけますぜ?
     多少、足の裏が汚れだって、んなもん、ちょろりとナメりゃ、ピッカピカ。
     ってなもんよ」

白玉 「あははは。マツさん、気分やなの?
     言ってることが、時々ひっくりかえっちゃうのね。面白いわ」

白玉はクスクスと笑いながら歩きだしました。
石松も、白玉の隣を歩きました。

白玉 「マツさんの弟猫さんて、どこへ行っちゃったのかしらね」

石松 「え?おいらの弟?んなもん・・いないぜ」

白玉 「奥の森で消えたって言ってたじゃない?」

石松は、ふと・・白玉が自分と誰かを勘違いしていると思いました。
でも、それを確かめてしまうと・・マタタビを返せということに?
なんて心配になり、白玉の話に合わせてしまいました。

石松 「ああ、消えた弟猫なぁ。どこ行っちゃったんだろ。
      さっぱりわからねぇや。もういいってことよ」

石松は、白玉が次に何を言い出すか不安になりました。
そこで、いつも通っていく道を変えることにしました。

石松 「じゃ、おいらはここで」

白玉 「あら、マツさんのねぐらは、この先でしょ?」

石松 「そうだけど、今日はこっちの道を通って帰るんだ」

白玉 「そう。じゃ、また明日。明日、会えたら教えてあげるわ」

石松 「ああ。今時分に、おいらは神社の前を必ず通るから」

白玉 「笛を聴きにくるでしょ?」

石松は、今度の演奏会だとばかり思いこみ、
「もちろん!」と答えて、白玉と別れました。

白玉はクスクスと笑いながら帰りました。

石松は、ホッとしていました。

(いったいどこのどいつと勘違いしてるんだ?
 ま、いっか・・)
 

-次回へ続きます-

泣いた石松 目次へ


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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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プロフィール

美月

Author:美月
家族は、夫と母と愛犬3匹、愛猫3匹、熱帯魚。
2015年春まで都内在住。
2015年春から隣県の実家暮らし。

2017年秋、放置気味のブログをこちらに移行して、ワンコ日記を再開。
再開のキッカケは、きくみみに、弟分(たび)ができたから。

ガーデニングブログも、こちらに移行しました。

【主 now The きくみみ&たび】とは、
【シュナウザーきくみみ&たび】
主人公(主犬公?)は愛犬たちという意味です(^^)

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注)
2017年10月以前の記事のページは、3つのブログがこちらに移行されていますので、
記事内容のダブりがあります。
少々ウザイ状態ですが(^^ゞ
リンク先が不明ページも(ここに移行して載せていますので)実は、あるのですょ。


猫の創作話は【駒吉(愛猫の名前)】で綴っています。

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